なにしてみよっか

サービスってなんだろな?を細々と。基本マニアックなネタが多いです。トヨタ生産方式を信奉してます。某製造業の営業と社内SEをやってました。

SoRとSoEはちゃんと考えようって話(2/5)

2回目です。

前回やこの長編全部を確認する場合は、タグから選んでください。

 

前回、SoRとSoEを使う上で3つ重要な概念を書きました。今日はその中の1つ目、どっちも大切について説明します。

 

企業の活動を記録するためのシステム(SoR)はなんとなくわかると思いますが、とても大切です。ここでいう活動、とは究極的に言えば、企業の信用に関わることです。

企業の信用とは何によって培われるか。

色々なご意見があるのはわかりますが、その上で最もといえば、やはりお金(決算)に関わることだと思います。

買う、作る、売る、雇う、それぞれの企業の生業によって変わりますが、「お金」という共通の対価をもらい、支払い、それによって社業を推進し、顧客から収益を上げてどんだけ儲けたのかをちゃんと説明する。

それは誤ってはいけない(結果的に誤魔化しや嘘になってしまうから)ですし、そうならないためにも正確であり確実であることが求められます。

 これがSoRの達成目標です。

SoRに指定されるものは実は多岐にわたると思います。そしてシステム化できない部分もあります。極端なことを言えば、小売業が毎月行う「棚卸」。電子タグなどで負荷を軽減する取り組みは始まっていますが、少なくともSPAでは聞いたことはあってもスーパーなんかでは聞いたことありません。しかし、毎月愚直に行っています。現物をシステムに落とし込む行為、これもSoRに含まれると思います。

 

では、翻って、SoE。これも今まさに大切といわれているものです。

エンゲージするためのシステム。つまり顧客の満足度を高めたり、顧客の期待を受け止めて顧客が受け取る価値を最大化するためのシステムです。わかりにくいので私の理解で一例をあげると、顧客に便利さを提供するものです。(あくまで一例です。)

ただ、この顧客も曲者で、誰を顧客にするかで意味合いが大きく変わります。

一般的にはお客様(売上の一部となるお金を渡してくれる最終消費者)になりますが、前述のスーパーに例えると、POSシステムの端末を使ってお客様からお金を受け取る「役務を提供してくれる」店員さんもPOSシステムから見れば顧客になります。

そうなんです。この「してくれる」相手が顧客になりえるのです。

この発想をEaaS(Everything as a Services)といいますが、本稿とは若干ズレるので、いったん割愛。

話が発散しないようにここでいう顧客は、最終消費者に絞りましょう。

もう一度書きますが、SoEとは、顧客の満足度を高め、顧客からお金を頂く機会や時間、総量を増やす(その点では、LTV向上と似ています)ためのシステムです。

いや、どう考えても大切ですよね。

なので、どっちも大切……というのは今回の話の半分です。

 

ここから、もう半分の理由です。

ちょっと疑問が出てきませんか?

だって、SoEのシステムたちが成功し顧客の受けとる価値を上げると企業が得られる対価が増える。つまり、SoRに記録しなきゃいけないじゃないですか。まるで真反対なイメージが付きまとうSoRとSoEなのに、連携しなきゃいけないの?

SoEを追加開発すれば、それは状況によって無形固定資産や建仮に組み入れないといけないんじゃない?

そうなんです。SoEとSoRは密接につながってるんです。

図にすると↓こんな感じ。

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この図を、一つのサービスだと考えてみてください。そうするともう一つ見えてきます。一つのサービスを提供するためにはSoRとSoEを行ったり来たりするんです。

例えば、Amazonでお買い物したとしましょう。

SoEであるアプリを立ち上げると、SoRの個人情報を取りに行きます。

SoRに記録されている購買履歴とSoEの欲しいものリスト、閲覧履歴、さらにSoRの他の顧客の購買履歴とを突合させ、SoEとして「この商品を見た人はこんなものも買っています」(レコメンド)機能を出します。

欲しいものをSoEのカートに入れ、SoRで決済します。

と、まぁこんな感じで。

何かお買い物をするだけで、SoRとSoEを行ったり来たり。

そうなんです。SoRもSoEもどっちも大切な理由は、それぞれが企業の記録や成長のために必要だ、というだけではなくて、密接に絡んでいてどっちが大切かという議論を超えたところにある、ということなんです。

 

DevOpsが言われ始めたころ、SoRはウォーターフォールSoEAgileなんて言われたものです。SoRの時代は終わり!これからはSoE!なんて思ってた私もいました。

違うんです。SoRもSoEもそれぞれ役割が違うだけで、大切なんです。そして、両者は切っても切れない。エンゲージメントだけを高めても企業としては破綻するし、記録だけやってても満足を提供できない以上市場から淘汰される。

 

もう一回だけ、EaaSの話をすると、記録するために従業員に苦労を強いてると従業員が辞めるんです。かといって、記録を取らないと企業が潰れます。説明できないから。

 

SoRとSoEはどっちも大切なシステム。

密接だけど、密結合にしちゃいけない。ワンパッケージにしちゃいけない。

次回は、このワンパッケージじゃダメよ議論をしたいなと思います。

 

あー、、やっぱりこの回だけでも長くなったか。。