久々に読書感想文。
翻訳家の腕なのかもしれませんが、とにかく非常に腰が低いです。このテの自分の実体験をベースにした研究は、概ね(個人の穿った見方かもしれませんが)「これから先、こんな手法が王道になるのだ!」というような強い意志を文章の端々から感じるのですが、この本はそうではなかった。
序章にも「私の経験が全てに通用するとは思わないが、何かの発想のヒントとなりうる事を祈念している」的な書き方をされています。
対アルカイダ作戦の指揮官として配属された著者が、退任後自身の経験を分析しいかにして変化対応(原文に即すなら適応の方がいいかもしれません)型組織としてのチームとして成り立っていったかを書いた本です。
ちょっと横道にそれますし、反論もあると思いますが。
個人的には、軍事的な研究は平和的な転用をすることで便利な社会を作ることができると思っています。例えば、現在携帯電話を耳に当てずに電話している人を見ないことはないですが、それを可能にする技術エコーキャンセルは、潜水艦のソナーの技術の転用です。他にも、有名な話で言えば、インターネットもGPSもそもそもは軍事技術として発達しそれを非軍事技術として転用したものですよね。これは軍事技術というものが費用対効果をガン無視して研究することができるからではないかと思っています。(個人の感想です)
ですので、軍事的な背景があった研究であったとしても、そういった事を拒絶するのは勿体無いなと思っています。誰かを傷つけるための技術であったとしても、それを扱う人が意識をすれば、世界を少し変えられる技術として誰かの役に立てる。そう願っています。費用対効果を出さねばならないビジネスに対して、軍事技術の研究は太いパトロンが必ずつくので費用対効果を無視できる。それだけなのです。
この本ですが、簡単に書けば組織の壁を壊し、人の信頼関係を取り戻し、組織を変えていった話です。今までの本と変わり映えしないですね(笑)
ですが、今までの組織論と確実に違うと思われる点として、目まぐるしく変わる状況下において、相手を信頼し、状況を察し、臨機応変にチームと人とが動けるようにする(つまり、察することを可能にする)土台を作るために組織の壁を壊した。そして組織の壁を壊せる人材は、受け入れる側にも受け入れてもらう側にも一定の条件がある。ということを解き明かしている点で読み応えがあります。
また、このような変化適応型組織としてよく言われる
マネジメントからリーダーシップへ、Lean /Agileの組織論に近いです。
逆に、DevOpsのように、LeanやAgileの組織論を土台としたテクニカルな開発〜デリバリメソッドは一切書かれていません。まぁ、そりゃそうですよね、開発〜デリバリという点はこの本の世界観では、土煙と実際の戦闘行為なので。。。
このような変化適応型組織において、マネージャーはどのようなマインドセットを持った人材が必要でそのようなマインドセットをどのように伝播させていくのか。さらに、マネージャーはマインドセットの育成と電波と共にその作戦(ビジネス)に必要なスキルセット(プロフェッショナリズム)を合わせていく必要がある。
承認する、責任を取るそれだけではなく、こういうことを狙っていくことが高度化されたマネージメントには求められていくのかもしれません。