なにしてみよっか

サービスってなんだろな?を細々と。基本マニアックなネタが多いです。トヨタ生産方式を信奉してます。某製造業の営業と社内SEをやってました。

今あるサービスをITIL4で検算してみる-みんなの銀行の新しさ-(3/5)


本日は長編第3回。サブタイトルは、みんなの銀行の新しさ。

どこら辺が新しいのかというと、みんなの銀行は「お客様」を再定義して、銀行という存在の考え方をRe-designしたことにあります。

これを理解するためには、そもそも銀行とはなんぞや?ということを理解しておく必要があります。

銀行とは何でしょうか?

色々定義はありますが、銀行の根本的なビジネスモデルとは、「お金を集めてお金が必要な人に貸すこと」につきます。(図3-1:銀行のサービス提供モデル)

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図3-1:銀行のサービス提供モデル

この図で言えることなのですが、口座を開設したユーザは、銀行のビジネスモデルにおいてはお客様(消費者)ではないということです。お客様はお金を借りる人(債務者)になります。お金を預けてくれる人は「銀行のサービスプロバイダ」だということなんです。

これは、あくまで銀行という組織のコアサービスにおいてそう言えるということです。

都市銀、地銀をはじめ、全ての銀行及び管轄省庁のすべてのベースはここにあるはずです。

ATMやオンラインバンキングなど、口座開設者に向けた便利なサービスが増えていますが、システムの考え方のベースとなっている銀行のコアビジネスはこの貸し出す方向けビジネスなので、正直、ただのオマケに過ぎません。

 

それに対し、みんなの銀行は明確に異なる考え方を打ち出しました。プレミアムサービスを月額600円のサブスクリプションとして売り出しました。要するに、口座を開設したユーザもサービス消費者であるという考え方にシフトさせた。銀行がサービスを提供するのは誰か?という点に正面切って取り組み、Re-designした。

結果、「口座を開設し、そこにある現金を財布から取り出すかのように自由に使う」という行為は無償(今までの銀行の考え方を踏襲)しながら、そこに追加サービスを月600円で提供しユーザからサービス利用の対価を得ようとしている。

サービスの内容は、正直まだ残念ですが。(ここの提案は第4回で書く予定)

これはものすごいパラダイムシフトです。

大手銀行では、通帳を持ち特定の条件を満たす口座について、手数料を取ることになりはじめました。一緒じゃないか!と思われる方もいるかもしれませんが、明確に異なります。本論ではないので、註釈で書きます。*1

これにより、みんなの銀行は、サービス関係を新たに構築することに成功しました。

図解すると以下の赤枠部が新たに開拓したサービス関係になります。(図3-2:みんなの銀行のサービス提供モデル)

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図3-2:みんなの銀行のサービス提供モデル

正直月額600円の価値がユーザとみんなの銀行それぞれであるのかと言われればないです。

この600円を毎月デビットカード利用のキャッシュバックで取り戻そうとすると、毎月60,000円使うということです。独身デジタルネイティブならあると思いますが、一般的なサラリーマンの平均小遣い考えれば結構きつい金額です。

みんなの銀行側としてもサービス利用料として毎月600円集金しているのに、その600円分をまるまるキャッシュバックに使うなんてビジネスとして破綻しています。

というわけで、自分が知り得る限りの情報で判断する限り、今のプレミアムサービスが成功であるとは微塵も思いませんが、新しいサービス消費者を発見し、そことサービス関係を築いた。これこそが今までの銀行にない考え方ですし、今までの銀行へのディスラプトの第一発目の号砲となるような気がします。

 

みんなの銀行がこのサービス関係を今まで関係を構築し得なかった人たちともつという発想で勝負をし続ける限りにおいては、金融業の台風の目になるような気がしています。

*1:

みんなの銀行は、このサービスは有償かつ、選択可能です。つまりサービスの内容に納得し、契約を締結して初めて利用可能です。そして、サービス利用料は、サービス利用料として決済されます。

それに対して、都市銀の通帳有償化は、特定の条件を満たす場合は強制です。今までの既存サービスをそのまま受けようとすると強制的に費用がかかる。それを回避する場合は、何か他のサービスを受けなければならない。そして決済は口座から引き落としです。