なにしてみよっか

サービスってなんだろな?を細々と。基本マニアックなネタが多いです。トヨタ生産方式を信奉してます。某製造業の営業と社内SEをやってました。

ITIL4で考えたマーケティング戦略-セブン銀行の本気度-

ご無沙汰しております。本日はまた、セブン銀行のサービスにインスパイアを受け、この疑似を書こうと思いました。

過去、セブン銀行が新たな顧客を創出した、という記事を書きました。

agile-beginners.hatenablog.com

今回はさらに、セブン銀行はこのようなATMというものをどう扱おうとしているのか、彼らの戦略を踏まえてITIL4で検証してみましょう。

まず、下記、2024年3月期の第一四半期決算 説明資料をご覧ください。(クリックで開きます)

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS96633/586c32ff/c59c/4036/97ac/99bbc73bbc9d/140120230803533965.pdf

まず、3Pを見てわかることとして、セブン銀行にとっての「お客様」つまり、マーケティングの対象となる事業は2つあるということがわかります。すなわち、、、「ATM(国内・海外)」「預金貸出(ローン)」の2つです。

過去記事で取り上げた通り、彼らはATM利用者をキャッシュカードを持ってATMに立つ人のみを対象としていません。現金をデジタル化・アナログ化する接点としての役割を欲する事業者、例えば、自行のATMを進出させきれない他行(都銀・地銀・銀行関連ノンバンク)やそもそも自社ATMを開発する気がない(資本を投下する優先順位が低い)金融サービス企業、金融サービスを提供するIT企業、PayPay、LINE Pay、auPay、d払い、楽天payなどいわゆる"チャージ"をしたい企業からの手数料でも成り立っています。

なのでこの前笑ってしまったのですが、こんなこともできます。

PayPay送金しか方法がない取引の際、QRコード取引でセブン銀行ATMから現金を引き出し、セブン銀行ATMからPaypay口座にチャージして、Paypayの機能で送金する

デジタル間取引ができれば一番早いのですが、現金がいわゆる一つのI/Fとして存在しているが故に、どうしても銀行口座にあるデジタルのお金をアナログな現金(紙幣)に変換し、そしてPayPayアカウントのデジタル化のお金に再度変換することで送金する。つまり、銀行に預けることでデジタル化された現金を、一度アナログな現金に戻した上で、PayPayのプラットフォームで再びデジタル化する。そうすることで送金ができる。

セブン銀行からすれば、ATMに保管される紙幣の総量は変わらず、手数料だけは銀行とPayPayからもらえる。なんという超効率的な収益のあげ方か……!!

余談ですが、PayPayはデジタル/アナログ変換に手数料の支払いだけで済む(自分達でデジタル/アナログ変換する機会を創出しなくて良い)し、Paypayユーザも必要な分だけをPaypayに振り込めばいいので無駄に大量に現金をPaypayに振り込む必要がない。誰も損をしていない。

 

結果、セブン銀行の四半期決算説明資料には、主要計数として、ATMの利用件数がカウントされレポートになっている。これは本当に銀行の決算説明資料としては面白い。通常、銀行の決算説明資料では、「貸出残高」を初めとした「集めた現金をいかに運用しているか」を示す係数が出されます。

しかしセブン銀行は、そもそもビジネスモデルが、お金を運用することではなく「現金をアナログ/デジタル間で変換させることによって発生するトランザクションに課金する」というビジネスモデルなので

  • どのデジタルプラットフォームに変換するか
  • いつ、どこでデジタルとアナログの変換を発生させる需要があるか

の2つに集中すればいい。

そう集中した際、彼らは、「どの」デジタル・プラットフォームという部分に集中して取り組み、既存の金融サービス企業(PayPayや楽天auなど)や既存銀行だけではなく、ドル、ルピア、ペソなど国を跨った金融プラットフォーム向けのデジタル/アナログ変換にも進出しています。(決算説明資料16P以降)

そして、「いつ、どこで」デジタル/アナログ変換を発生させる需要があるかに真剣に取り組むがゆえに、不振のインドネシアATM事業において、「設置場所の見直し、利用促進を企画する」というレポートを出せる。(決算説明資料19P)ATMの設置台数を毎月速報としてレポートし、四半期決算では、ATM設置件数とともに利用件数を主要計数として報告する。(決算説明資料9P)

 

さて、これらを理解した上で、セブン銀行をITIL4で考えてみると、彼らは「サービス関係モデル」を新たに定義しました。ただし、これは自分達(つまり、銀行)目線でサービス関係を作ろうとしてもうまくいきません。なぜなら、銀行の本分は「お金を集めお金を必要とする誰かに貸す」ことだからです。

 

そもそものセブン&アイ・ホールディングスのパーパス「あったらいいな」これはUX(ユーザエクスペリエンス)です。これを叶えるためのDX(デジタルトランスフォーメーション)として既存のリソースの最大活用を考える。この発想ができて初めて、この全く新しいサービス関係、つまり「お金のアナログ/デジタル変換」に至ることができる。

 

さらに今回ここにきて22P以降にある通りセブン・カードサービスが加わって、セブン銀行として自社のノンバンク事業を手に入れた。

ノンバンクはもはや与信業務特化というより、デジタル化した決済手段の側面が強くなってきました。つまり、セブン銀行は「お金のアナログ/デジタル変換」特化ではなく、そこからさらにデジタル決済に係る自社サービスを手に入れた。これにより、セブン銀行は新たなサービス関係を構築することができます。

セブン銀行は本気です。実は、金融業界のAmazon(流通の黒船的な意味で)なのではないか。そう思えてきます。

 

 

セブン銀行ATMをみて、マーケットの創出というものがどう言うものかを感覚的に理解した。

つまり、現金をデジタルとアナログの境界を再定義するサービスを開発し、それを求めるユーザのアクティビティをマーケットに据えた。

 

結果、カオスな(スマホを使ってみんなの銀行から引き出し、スマをを使ってpaypay口座に入れる)みたいなことができる。

 

競合という意味で、アナログな業界にもデジタルな業界にも全方位に喧嘩を売っていく新しいスタイルのマーケットを開発した。(笑)