第3回、プラクティスを 3つに大別した理由を考察したいと思います。
そもそもITIL4になってプラクティス(旧プロセス)は、34個になりました。
ITILv3では、26プロセスと4機能の計30。あまりボリュームとして大きな違いはない。
参考までに、某ITSMの大先輩のツイートを貼ります。
ITIL4とITILv3の関係が分からなくなった人はこの図が役に立つと思います。v3の知識を4にアップデートしたい人はこれを見てから勉強を始めると理解が早くなります。
— NK 🧙♂️ | 『ITIL4の基本 図解と実践』10/14出版 (@nk_acn_tokyo) 2022年10月5日
さらに詳しく知りたい方は『ITIL4の基本 図解と実践』(日経BP社)をご覧ください。https://t.co/i89VGZVqvq pic.twitter.com/ONkM8awVPn
この画像(本の一節*1)、本当によくできていて、違いが一目瞭然です。
ITILv3で存在した、SS,SD,ST,SO,CSIと纏まっていた*段階*という概念がなくなった。
これは、サービスが企画・戦略から、つまり提供者目線(SEEDS)のライフサイクルから発生するのではなく。受益者目線の需要(NEEDS、、、という言い方は古いかな。どちらかといえばdemandとでも言いましょうか)から発生することを意識しているのだと考えられます。
もう少し詳細を言うと、ITILv3は、SS(サービスストラテジ/戦略)をトリガとし、SO(サービスオペレーション/運用)まで流れてゆくサービスライフサイクルとしていました。
しかし、ITIL4は、需要(demand)がトリガとなりSVS(サービスバリューシステム)を通ることでサービスとして提供される。つまり、戦略起点でサービスを考えるのではなく、どれだけデマンドが存在するかで考える。ゆえにサービスライフサイクルの考え方がそぐわなくなった、と考えています。
こう考えるとサービスライフサイクルの段階としてプラクティスを表すのは確かに無理がある。では、なぜこの3つのプラクティスに分類したのか?
そこで、改めてITIL4のそれぞれのプラクティスをじっくりながめると、何を目的としたものかがおぼろながら見えてきます。
- サービスマネジメントプラクティス→サービスの生産に直接的に関わるプラクティス
- 一般的マネジメントプラクティス→サービスの定義、およびサービスの生産性を計り.サービスの方向性を決定するプラクティス
- 技術的マネジメントプラクティス→サービスの生産を間接的に支えるプラクティス
こう考えることができるように見えてきます。
事例として、サービスマネジメントプラクティスの17個がどう直接的に関わっているかを製造業の現場だったらどのようなことになるかを例えにして簡単に解説します。
- インシデント管理、サービス要求管理・モニタリング及びイベント管理・サービスデスク
- 問合せや定型作業をこなすことによりリクエストに応えサービスを提供する
(サービス提供のための実作業。製造ラインで行われる製造作業ですね。)
- 問合せや定型作業をこなすことによりリクエストに応えサービスを提供する
- 変更実現・リリース管理
- サービス提供範囲の変更作業や変更ではない作業によってサービスを提供する
(サービス提供のための高度な実作業。製造ラインで行われる高度な製造作業や製造ラインの改修/変更も含まれます)
- サービス提供範囲の変更作業や変更ではない作業によってサービスを提供する
- サービスカタログ管理・問題管理・キャパシティ及びパフォーマンス管理可溶性管理・サービス構成管理・サービス継続性管理・IT資産管理
- どのような装備、装置、及びカタログを有しているのかを可視化する(サービス提供のための装備・装置の管理。製造の現場であれば工場と工場の備品の管理)
- サービスデザイン・サービスの妥当性確認及びテスト→サービスの開発(製造の現場であれば、新しい製造ラインを構築する作業や製造ラインの改善/改修計画、製造テスト)
- 事業分析
- 新しいサービスそのものの開発。(製造現場であれば、新製品の研究開発)
- サービスレベル管理
- 提供されたサービスの品質とサービスを製造する現場の品質の管理(一般的マネジメントの範囲に入.りません。製造現場における製品のQCとラインのQCを意味しているためです。)
とまぁ、このような感じになります。
表現がめちゃくちゃ難しいのですが、あえてこれら3つのプラクティス群を関係図にすると次のようにります。
ITIL4は、 ITを使ったビジネス管理(ビジネスマネジメント)のフレームワークなのです。そう変化した。そのため、サービスを作るコトそのもの、作ったサービスの効果測定とROIや原価の把握、そしてサービスを生産する環境。この3つに関する体系をBOKとしてまとめた。
こう考えるとこの3つのプラクティス群がしっくりくる。
ITIL4は、サービスの提供がビジネスになるという事を念頭においたビジネス管理フレームワークなのです。この想像が合っているのだとすると。
上記の図の通り、どの立場でこのビジネスをながめるのかによリ、どの立場の人がどのプラクティス群を重視するのかが見えてくる。
我々ITサービスマネジメントの実務者は、これらの関係者(立場)に配慮しながら、サービス製造のための工場を建設し、そこで働く人達をサーバントする。
それこそが、ITIL4の意思ではないかなと。ゆえに、DXにも使える、これからのビジネスマネジメントとして役にたつのがITIL4なのかなと。
プラクティスという名前に姿を変え、かつそれらを大きく3つに大別した理由。それは、ITILがITインフラストラクチャの教科書群から、ITを使ったビジネスマネジメントのフレームワークとして大きく姿を変えた。そんな背景が見えてきます。