なにしてみよっか

サービスってなんだろな?を細々と。基本マニアックなネタが多いです。トヨタ生産方式を信奉してます。某製造業の営業と社内SEをやってました。

今あるサービスをITIL4で検算してみる-自分でサービスを取捨選択するために-(1/5)

知ってみると試したい、試してみると教えたい。

そんな思いで、この記事を書きます。

 

今日登場するのは、最近知った「みんなの銀行」という銀行のサービス。

詳しくは知らないのですが、福岡銀行という福岡の第一地銀の子会社?スピンオフ?よくわからないのですが、とにかく地方銀行が意を決して出した新サービスを運営する会社「みんなの銀行」が打ち出した、完全オンラインだけではなく、スマホ完結の銀行。という位置付けのようです。

www.minna-no-ginko.com

2ヶ月ほど前にサービスインしたことを知り、興味本位で口座開設、私のへそくりをコッソリと(笑)移し、どんなサービスかを学んでいました。

できることは以下

 

通常サービス

  • キャッシュレスで買い物ができる(決済手段:JCB・QUIC Pay+)
  • キャッシュカードなしで現金をセブン銀行ATMから引き出せる(要手数料)
  • キャッシュカードなしで現金をセブン銀行ATM経由で預けられる(手数料無料)
  • 1つの総合口座の中で最大20個の目的別の貯蓄口座を作成(振替という概念がない)
  • 別銀行への振込ができる(要手数料)
  • 他の銀行やクレジットカードとの連携で資産の一覧化が可能(証券会社なし)

手数料が発生してしまうのは、あの全銀系NWの所為なので致し方ないのですが、これに追加して、プレミアムサービス(月額600円)を契約すると、以下に変更されます。

 

プレミアムサービス(追加機能太字)

  • キャッシュレスで買い物ができる(決済手段:JCB・QUIC Pay+)
  • キャッシュカードなしで現金をセブン銀行ATMから引き出せる(手数料15回無料)
  • キャッシュカードなしで現金をセブン銀行ATM経由で預けられる(手数料無料)
  • 1つの総合口座の中で最大20個の目的別の貯蓄口座を作成(振替という概念がない)
  • 別銀行への振込ができる(手数料10回無料)
  • 他の銀行やクレジットカードとの連携で資産の一覧化が可能(証券会社なし)
  • 無利息で50000円貸し出してくれる

不要か否かは今回論じるつもりはない(第4回で論じる予定)ので、割愛しますが、今無料期間だから加入してますが、無料じゃなかったらいらないですね。他のアプリや既存金融機関のアプリで実装できている機能も多いので。。

 

さて、長くなりましたが、この新サービスがITIL4によりどのように捉えられたのか、そして、サービス消費者組織*1として新サービスをどう取捨選択すべきかを論じたいと思います。

 

結論を書けば、消費者は以下2つの道を進むことで、これからの時代自分に合ったサービスを受け取れる人生が歩めると考えます。

  1. 自分が望むサービスをカスタマイズできるように、賢い消費者*2となる
  2. 自分の体験や価値に対して寄り添い、望むサービスを提供してくれるコンシェルジュを見つける。要するに、1を自分でするんじゃなくて、他人に任せる

みんなの銀行を使ったある日の出来事を、ITIL4のフレームワークの一つであるカスタマー・ジャーニー*3とそれを構成する、タッチポイント*4、サービスの相互作用*5を整理してみました。

 

結果、セブンイレブンの店舗には、さまざまなサービスをさまざまなサービスプロバイダが密接に絡んでコアサービスを提供していることが明らかになりました。

 

例えば、みんなの銀行の利用ユーザが現金を引き出したい場合、セブンイレブンに行く(図1-1)しかありません。しかし、セブンイレブンに行けば、お昼も買えます。(図1-2)

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図1-1

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図1-2


このジャーニーはそれぞれを単体で見ると対して目新しさはないのですが、これらのサービスがスマホのみでかつ自分の口座からダイレクトに行われる、という点で非常に新しい。

そして、セブンイレブンでこれができるということは、7&iホールディングスの全傘下の事業体(イトーヨーカドーとか、ヨークマートとか)でこれができるということです。

セブンイレブンから見れば、顧客の決済手段の多様化に対応しつつ、かつお金を引き出せるサービス、その中でもデジタル世代が銀行に寄るシーンに対して食やその他のサービスを提供するチャンスを得た。

新進気鋭のデジタルバンクは、わざわざATMに投資することなく利用料のみで全国数万のATMネットワークを手に入れた。

 

たった、キャッシュカードがないだけで、新しい囲い込みを相互に行なった。これには唸らざるを得ないなと思うのです。

作るのではなく、強いところと協業する。相互接続可能なサービス間で連携することでサービスを拡充する。

 

そして、この便利さに気がついたユーザ層が直感的に便利だと思うサービスを取捨選択し、勝手にExperienceを共有する。

 

これを狙って、ジャーニーを設計して作り込むことができるのであれば、これはもう、完全にDXだと思いますし、ITIL4の狙いである、顧客の価値に対して純粋に取り組む、オーダーメイドの価値提供に通じる部分があるなと思います。

 

7&iホールディングス(正確に言えば、セブン銀行な気がしますが)とみんなの銀行。

この2つのコラボレーションは、ちょっと注目しています。

 

*1:ITIL4において要求を発生させて、サービスを受け取る人・組織のことを指します

*2:例えばチート的なルールの穴をついて儲けるという意味ではなく、自分が望む価値を理解し、最小単位の価値として分解し、今あるサービスの組み合わせで再構築するということです

*3:出典,ITIL4DSV:サービスの顧客が、タッチポイントとサービスの相互作用を通じて1つ以上のサービスプロバイダやその製品を使用して体験する完全なエンドツーエンドの体験

*4:出典,ITIL4DSV:サービス消費者または潜在的なサービス消費者がサービスプロバイダやその製品やリソースと遭遇するあらゆるイベント

*5:出典,ITIL4DSV:価値を共創するサービスプロバイダとサービス消費者の間の相互のアクション