なにしてみよっか

サービスってなんだろな?を細々と。基本マニアックなネタが多いです。トヨタ生産方式を信奉してます。某製造業の営業と社内SEをやってました。

Amazon Prime wardrobeで考えたこと

最近、AmazonのPrime wardrobeというサービスを試しました。

 

正直恐ろしくなりました。色々。

 

以下、推論の域を出ませんが、簡単にこの恐ろしさについてお話しさせていただければ。

 

Amazon CAPTCHA

 

Amazon prime wardrobeってのは、こんなサービスです。

 

平日ポチって、土日に試着、要らないものはそのあと返す。

それを実現してしまったサービスです。

 

試して驚いた事。

  1. 返送するのに何も準備しなくてよかった。
  2. 全ての手数料がかからなかった。
  3. 返さなかったものだけ課金された。

 

いや、当たり前ですよね。当たり前のことを当たり前にする。これが恐ろしいと思ったんです。

 

おそらく、彼らは最初とんでもない数の実験をしたはずです。

 

まず、隣の同僚(仮にBさん)をお客様と見立ててお店やさんごっこをしたはず。

次に、間に別の同僚(仮にCさん)を挟んで、Bをお客さん、Cを返送業者に見立てて通販ごっこをしたはずです。

 

ここまでで、ありとあらゆる事態を想定し、どのようなサービスが必要かを特定したと思います。

 

そして、今自分たちが提供しているサービスでこれらのサービスがどこまでカバレッジ可能かを調べたと思うのです。もちろん、記録するシステムも含めて。

 

そして、お試しサービスという名前でごく限られた商品で試した。

 

そこでさらに精度を上げて今や何点あるんでしょうか?対象製品。

 

恐るべきは、「便利」というキーワードにここまで貪欲であるということです。

 

そして、モックアップから必要となるビジネスプロセスを定めて、仕組みに落とし込んだ。

 

そうじゃなかったら、ここまで洗練された返品プロセスを組み込めるはずがない。

 

プラットフォームに重きを置き、ビジネスプロセスを確立することをまず選び、その上に本当に提供したいサービスを作る。

 

これって、ある意味、すごいヒントだと思うのです。

 

どういうことかというと、「誰に何を売って、誰から金をもらうのか、誰にいくら金を払うのか」というサプライチェーンとビジネスモデルを一体化して考えているということ。

 

ビジネスモデルを作り、自分たちのリソースで提供できること出来ないこと(正確に言えば、提供しないこと)を明確にし、出来ないことはお金を払ってサプライヤーから提供を受ける。

自分たちの武器が明確で、自分たちにないもの(または、自分たちで作るにはコスパが悪いと思うもの)も明確にして、プロセスの役割に必要な人、チーム、組織を当てはめる。

 

アマゾンはイノベーションを考えているのではなく、結果的にイノベーションに至っているだけなのだと気がつかされました。

 

これが気がつかされたことの1つ目。

 

2つ目は、このサービスでラストワンマイルを担う、DSPに関わる問題。

 

DSP問題ってご存知ですか?

元デリバリープロバイダの俺が内部の実態について語ろう - Togetter

これこれこういう仕事をXX円でお願いできますか?という相手がただ、お金に目が眩んだ人かどうかを審査する必要はあります。

これをサボってるアマゾンも悪いとは思うのですが、これに対して、本気でアマゾンのラストワンマイルを担っているという責任がないのはこの会社の問題です。やり切れ!と言ってるわけではなく、アマゾンの単価が安いなら、なぜこの単価だと困るのか、品質を担保する正しい単価を提示する責任はこの会社にある。

 

どういうことかというと、XX円で実装できるように考える頭を持った人かどうか、ということです。この管理ができていないとDSP問題や、ファーストリテイリングが某東南アジアの縫製工場従業員から訴えられた、みたいな事件に発展する。

 

いい仕事をしても、「三方良し」みたいな結果には至らない。

 

原価低減の発想を持っている、または、契約にそういった想いを組み込めるフィクサーがいないサプライヤに発注してはならないとそういうことです。

勿論、Amazonもこういった状況に真摯に向かい合う必要はあります。

 

コスト削減!働き方改革!(残業削減!)を叫んだところで、ITによりプロセスはブラックボックス化し、細断された組織によりフローは全体を見通せない。そして組織ごとにITシステムいれちゃうもんだからビジネスプロセスはブラックボックスのまま細断される。

従業員単体は、指示された作業をすれば対価を得られる為、タスクリストを作って自分の仕事はこれだと定義してしまう。

そして、定義された業務をこなすことにフォーカスし、プロセス全体を見ようとしないし、また、見えない。(見えなくても課題が生まれない)

これは、明らかな人間の力の不信によるものです。

 

そして、この副作用は、先ほどのDSP問題などに発展してしまう。

 

この背景を考えると、いわゆる顕在化した問題の報道は実は本質を捉えていないことがわかります。

 

いくら素晴らしいビジネスモデルを考えても、サプライチェーンにより成り立つ今のサービスやプロダクトの提供モデルに登場するすべての人物が、人間性を取り戻し、働き方を変えないと真の三方よしは成り立たないし、提供企業は非難される。

そして、労働者も今までのように、ただ働いていれば認められて給与が降ってくるみたいな生活から脱しないといけない。

 

纏めます。

Amazonは素晴らしいビジネスモデルやビジネスプロセスを考える力がある。ただ、惜しい!と思う。

労働者は、ただ使役されるだけの働き方から脱し、かつサプライチェーンの一員であることに自覚をもって、主張することはしなければならないし、またそのサプライチェーンの一員である雇用主もその声に真摯に耳を傾け、また改善していかねばならない。自分たちは、自分たち以外の誰かにサービスを提供しているのだ、EaaSなのだと考えることが、労働者の働き方改革の第一歩なのです。