なにしてみよっか

サービスってなんだろな?を細々と。基本マニアックなネタが多いです。トヨタ生産方式を信奉してます。某製造業の営業と社内SEをやってました。

ITSMツールで可視化する内容を何にするか。(1/2)

ご無沙汰しております。

本日は、ITSMツールを選定する前、つまり、いわゆる要件定義フェーズにおいて、どのような機能要件が必要かというお話をしたいなと思います。

 

そもそも、ITSMを推進していく上で、ツールは必要でしょうか?答えはYesです。ですが、そのツールがITシステムで作る必要があるかと言われれば、答えはNoです。過去の記事において、「ホワイトボードと付箋」で構築したITSMツールの事例を出したように、そのツールを使って達成したいことが明確なら、ホワイトボードと付箋が一番早いです。

Agile開発風に言えば、まず達成したいこと(MVP)をホワイトボードと付箋でやってみてそこから自分達がツールに求める要件を洗い出して、スプリントで開発してくのが最も良いと思います。

ですが。そのMVPをまず定義していく必要がありますよね。そこで、とっかかりになるような機能要件(ITSMで達成したいこと)を考えてみましょう。

そもそもなのですが、ITSMを導入するというのは 「サービス提供状況」の可視化 という手段に過ぎません。可視化する目的は、それぞれの企業および集団に寄りますが、可視化はあくまで手段であって目的ではないことに留意してください。

では、可視化することによって何ができるようになるか。

ITサービス提供状況とは何によって構成されているのかを整理しないと、つまり、サービス提供状況とは、どのような構成要素によって成り立っているのかを製造業のQCDに基づいて考えてみました。なぜ、このQCDを使ったかといえば、ITに限らずサービスとは、「何らかの無形のモノを製造して提供すること」だからです。(図1:サービス提供状況のQCD)

サービス提供状況のQCD

一般的なQCDのうち、Dが異なります。通常、DはDelivery/納期と定義されていますが、本定義では、これを提供した数としてDeliverablesと定義しています。これは、納期が重要ではないということではなく、納期が品質に含まれるためです。*1

 

ITIL 4を含めITSMのフレームワークは、これら「サービスのQCD」を「分かっている」「知っている」ものとして扱っていて一切語っていないように思っています。サービスとは「どのような概念で構成されているのか」ということです。別の言い方をすれば、「サービスの普遍一般の構造化」と言ってもいい。

サービスとはなんぞや?という問いに対しては定義をして回答していますが、サービスの測定というものに対して具体的な定義がないよなと。そこで製造業を参考に改めて考えてみた次第です。

ITIL4が悪いというわけではありません。ITIL 4はサービスを提供する上で考慮するべき事項を一般的かつ汎用的に定めたBOKであって、そのままでは適用できるというわけではないからです。何度も同じ話をして恐縮ですが、ITILは「解が書かれているBOK」ではなく「解に繋がる考え方や定義を書いたBOK」です。「テーラーメイド*2」が必要なのです。

そのテーラーメイドの一つの要素が「チケット」なんですね。チケットという概念でサービスが製造ラインを流れていくように構成していく。それがITSMツールなんです。懺悔しますが、10年ほど前はITSMツールなんてワークフローシステムじゃないかと思っておりましたが、それは自身が浅学であったと強く思います。ワークフローはITSMツールの一つの大切な機能であるものの、どこまで行っても機能の一つに過ぎない(最も中心に置く要件ではない)というコトなのです。

 

さて、いつもの通り前捌きだけで大変長くなりましたが、ITサービスを構成する定量的な指標としては、「(コト)品質」「コスト」「提供数」の3つがあると定義しました。

この3つを何に適用して可視化するのか。それは次回に語りたいと思います。

 

・・・今回も全部書ききれなかった。。

*1:そもそもこのQCDは製造業で生まれた概念です。つまりリアルなモノを作り届けるが故に、その製造された物の品質と製造する物にかかったコストと、製造した物を届ける期日の納期の3点で整理するフレームワークになったのです。対して我々が可視化したいものは、物(goods)ではありません。有形無形のものを組み合わせて届けて満足してもらうコト(Services)によって測れます。満足には、当然納期の遵守状況もありますよね。したがって品質に含まれてきます

*2:パターンオーダーのスーツを想像してください。型紙はあるもののそれで仕立てたスーツは着れません。実際に体型を測り、好みをヒアリングし、型紙から微調整してそれぞれ仕立てる。そうすることでフィットしたスーツになる。