なにしてみよっか

サービスってなんだろな?を細々と。基本マニアックなネタが多いです。トヨタ生産方式を信奉してます。某製造業の営業と社内SEをやってました。

ITSMツールで可視化する内容を何にするか。(1/2)

ご無沙汰しております。

本日は、ITSMツールを選定する前、つまり、いわゆる要件定義フェーズにおいて、どのような機能要件が必要かというお話をしたいなと思います。

 

そもそも、ITSMを推進していく上で、ツールは必要でしょうか?答えはYesです。ですが、そのツールがITシステムで作る必要があるかと言われれば、答えはNoです。過去の記事において、「ホワイトボードと付箋」で構築したITSMツールの事例を出したように、そのツールを使って達成したいことが明確なら、ホワイトボードと付箋が一番早いです。

Agile開発風に言えば、まず達成したいこと(MVP)をホワイトボードと付箋でやってみてそこから自分達がツールに求める要件を洗い出して、スプリントで開発してくのが最も良いと思います。

ですが。そのMVPをまず定義していく必要がありますよね。そこで、とっかかりになるような機能要件(ITSMで達成したいこと)を考えてみましょう。

そもそもなのですが、ITSMを導入するというのは 「サービス提供状況」の可視化 という手段に過ぎません。可視化する目的は、それぞれの企業および集団に寄りますが、可視化はあくまで手段であって目的ではないことに留意してください。

では、可視化することによって何ができるようになるか。

ITサービス提供状況とは何によって構成されているのかを整理しないと、つまり、サービス提供状況とは、どのような構成要素によって成り立っているのかを製造業のQCDに基づいて考えてみました。なぜ、このQCDを使ったかといえば、ITに限らずサービスとは、「何らかの無形のモノを製造して提供すること」だからです。(図1:サービス提供状況のQCD)

サービス提供状況のQCD

一般的なQCDのうち、Dが異なります。通常、DはDelivery/納期と定義されていますが、本定義では、これを提供した数としてDeliverablesと定義しています。これは、納期が重要ではないということではなく、納期が品質に含まれるためです。*1

 

ITIL 4を含めITSMのフレームワークは、これら「サービスのQCD」を「分かっている」「知っている」ものとして扱っていて一切語っていないように思っています。サービスとは「どのような概念で構成されているのか」ということです。別の言い方をすれば、「サービスの普遍一般の構造化」と言ってもいい。

サービスとはなんぞや?という問いに対しては定義をして回答していますが、サービスの測定というものに対して具体的な定義がないよなと。そこで製造業を参考に改めて考えてみた次第です。

ITIL4が悪いというわけではありません。ITIL 4はサービスを提供する上で考慮するべき事項を一般的かつ汎用的に定めたBOKであって、そのままでは適用できるというわけではないからです。何度も同じ話をして恐縮ですが、ITILは「解が書かれているBOK」ではなく「解に繋がる考え方や定義を書いたBOK」です。「テーラーメイド*2」が必要なのです。

そのテーラーメイドの一つの要素が「チケット」なんですね。チケットという概念でサービスが製造ラインを流れていくように構成していく。それがITSMツールなんです。懺悔しますが、10年ほど前はITSMツールなんてワークフローシステムじゃないかと思っておりましたが、それは自身が浅学であったと強く思います。ワークフローはITSMツールの一つの大切な機能であるものの、どこまで行っても機能の一つに過ぎない(最も中心に置く要件ではない)というコトなのです。

 

さて、いつもの通り前捌きだけで大変長くなりましたが、ITサービスを構成する定量的な指標としては、「(コト)品質」「コスト」「提供数」の3つがあると定義しました。

この3つを何に適用して可視化するのか。それは次回に語りたいと思います。

 

・・・今回も全部書ききれなかった。。

*1:そもそもこのQCDは製造業で生まれた概念です。つまりリアルなモノを作り届けるが故に、その製造された物の品質と製造する物にかかったコストと、製造した物を届ける期日の納期の3点で整理するフレームワークになったのです。対して我々が可視化したいものは、物(goods)ではありません。有形無形のものを組み合わせて届けて満足してもらうコト(Services)によって測れます。満足には、当然納期の遵守状況もありますよね。したがって品質に含まれてきます

*2:パターンオーダーのスーツを想像してください。型紙はあるもののそれで仕立てたスーツは着れません。実際に体型を測り、好みをヒアリングし、型紙から微調整してそれぞれ仕立てる。そうすることでフィットしたスーツになる。

読了:図解即戦力 ITIL4の知識と実践がこれ1冊でしっかりわかる教科書

ご無沙汰しております。本日は読書感想文兼はてなブログ今週のお題「最近読んでるもの」との抱き合わせ。

 

そもそもなのですが、この技術評論社の「図解即戦力」シリーズにITIL4が取り上げられたことが本当にありがたい。

帯の「デジタル・VUCA時代を生き抜く」。そんなに大それたことかなぁと思う部分もあるのですが、まぁ、間違ったことは書いてませんよね。近年個人でどんどん定量化できる領域が拡大していっています。

例えば、筆者が個人的にデジタル化目覚ましいなぁと思う領域はヘルスケア領域ですかね。ウェアラブルバイスが一気に拡大し、ヘルスケアの領域はどんどんデジタル化していってます。正確に言えば、デジタル技術による定量化とそれに伴う健康への動機づけ、になるかと思いますが。

筆者はApple Watchを愛用していますが、これによって得られたヘルスケアのデータは非常に自身の健康維持改善に役立っています。会社の健康診断で優良の結果が出たのはこれら定量化された自身のデータ短いスプリントで振り返りKPTを繰り返した結果だと思っています。おっと、Agileの話になってしまいました。このAgile開発のテクニックを使った健康管理はこれはこれでおもしろいので別でいつか書くかも。

閑話休題

この本の最大の特徴は、わかりやすいではなく「適用しやすい」「腹落ちしやすい」ことにあります。その秘訣は、とにかく豊富な実例。ITIL4、特にファウンデーションは基礎理論であり概念的な説明や図式が非常に多く、「言いたいことはわかるけど、それって結局どう適用すれば良いの?」という感想を持つことが多いです。筆者も御多分に洩れずそのクチです。それを少しでも腹落ちさせるためにこのブログを始めました。

その点、この本は概念的な理解を促す説明とともに、読者にとって親和性の高い具体例をつけてくれています。例えば、ITIL4の最上位概念である4つの側面と6つの(外的)要因の図。

4つの側面と6つの要因

これなんかまさしく「言いたいことはわかるけど、それって結局どう適用すれば良いの?」の最たるものだと思うのですが、この本では、概念レベルでの理解を促すと同時に、具体的な事例を交えて説明してくれています。

そして同様な理解に陥りやすい「7つの原則」「SVS(サービス・バリュー・システム)」「SVC(サービス・バリュー・チェーン)」「バリュー・ストリーム」「プラクティス」「カスタマージャーニー」といった概念やフレームワークについて、(おそらく著者の経験に基づく)具体的な実例を交えて解説されています。

正直、「ITILって何?」「ITSMに取り組みたいけど何から手をつければ良いかわからない」というレベル感の人には不適であると言わざるを得ません。そもそもそういった読者を対象としていないと思います。そういうこれから学ぶ方には、個人的に「黄色本(なぜか黄色ばっかりなので)」と呼んでいる翔泳社ITIL系の本がオススメです。また、「ITIL4の教本」は、2023年11月現在Kindle Unlimited対象になっていますので、今がおすすめかもしれない。

 

 

 

お金に余裕がある、または会社が補助してくれる場合は、ちゃんと有償の講義を受けましょう。(笑)

さて、そうやってちゃんと勉強した後、この本は副読本として本質的な理解を促してくれます。試験対策には向きませんが、ファウンデーション試験を突破した後、より実践的に理解し適用させていく時にこの本は必ず役立ってくれると思います。

 

 

最後に、、、なぜかITIL4のAxelos公式認定本は紫ばっかりなのはなんでなんで・・・と書いていて、自分もなぜか紫を多用していることに気がつきました。(笑)

おそらく、ITIL4のイメージカラーが紫だからなのでしょうね。公式そのものが紫を多用しているので、我々実務者も自然とその色を選択してしまうのかw

ITILv2時代は赤本青本と呼ばれていましたが、ITIL4からは非公式の黄色本、公式の紫本、なんて呼び名が定着するのかなぁ。

チケットに何を埋め込むか+管理者目線のチケット制御のテクニック

今週は、ITSMにおける悩みというか管理の実務を担う方向けの一つの考え方として整理できればいいなと思い、今回のテーマを選びました。

ズバリ、ITSMツールのチケットには「何を埋め込めばいいのだろう」という問題。そして、それをどう展開していったらいいのかのテクニック。

 

これを進めるにあたって、そもそも「チケット」とは何か?をテーマに語りましょう。

チケットとは、おおよそIT運用やIT開発をしていく上で生じる作業を関係者で眺められるようにしたものです。想像してください。ホワイトボードにペタペタ貼られた付箋。その付箋一つ一つがIT運用や開発で今起こっている、そしてこれから起こる、そしてすでに終わった作業の一覧です。そうなのです。そもそも、チケットとは「付箋」です。

ですから、全員が一堂に会しているのなら、大きいホワイトボードに作業を付箋にして貼り付ければITSMツールは完成なんです。

小難しく考える必要はありません。チケットは付箋。そして時間がかかり重い作業であればあるほどチケット(付箋)に書かれる文字は多くなり、チケット(付箋)は大きいものにせざるをえなくなる。

じゃあ、そんなことが今のこのご時世できるか?

……できませんよね。いえ、正確に言えばできないことはないのですが、日本や世界中に散らばった同僚やパートナー企業の人と同じ場所で同じ時間に働くなんてことは一朝一夕にはできません。それに、付箋ばっかになっていたら集計に時間がかかりますし、集計するだけで一苦労です。

それに対応するために、スモールスタート、かつ俊敏に動くAgileがあったりするわけですが。

ITSMは、管理者向けのナレッジであり、管理と人間の営みとして起こる運用を両立させるためのツールでもあるのです。リモートや時差のある人たちとも一緒に働けるようにする。その点では、働く上でのバリアを取り除くことができるナレッジとも言えます。

では、何の情報を付加することで、上記のようなアナログな一目見てわかる状況可視化をITSMツールで実装するか。

それには、そもそもチケットに何の情報を入れるべきなのかを整理しておく必要があります。

今回はテクニックの話もあるので、先に整理したものをご覧下さい。文字文字しており申し訳ありません、、、あ、それはいつもの通りか。。(図1:チケットに付加する情報整理)

図1:チケットに付加する情報整理

左を見ていただければわかりますが、チケットに入れる情報は大きくは2つにしか過ぎません。

先ほどのホワイトボード上の付箋の例えをそのまま使うと、付箋そのものの存在を示す「定義」と、その付箋の大きさ、色、形を示す「周辺情報」です。チケットを実際に取って作業をする運用者目線だと、チケットの大きさ、色、形も「定義」に含まれると考えると思います。しかし、今回は、ITSMの実務者目線から見ると、そのチケット(付箋)の大きさ、色、形は、KPI /SLA /SLOとそのサービス提供組織(自組織)がどのようにサービス運用を改善したいのかの分析目線で入手できる情報のことをさします。

そして、管理者目線でこれらを見ていてもダメです。なぜならこのチケットを実際に手に取り作業を実施してくれるのは運用者。したがって、彼らのためになる、または彼らからすると意味がない情報は見えなくしてあげないといけません。ここのミソは、「見えなくしてあげる」ということです。無くしてはいけないのです。つまり、論理的に削除することは良くても物理的に削除してはいけません。特に分析情報。そして、分析情報は、結局運用者目線で大切なことであったり解決したい課題に直結するため、可能であれば一定のルールを決めて、セルフ追加、セルフ削除であることが望ましいです。

言うなれば、サービス管理ツールは生物です。運用や開発が刻一刻と状況を変えています。したがって、一定期間後、取得していたタグ情報は陳腐化し意味がなくなることもあります。それを速やかにキャッチアップできるのは管理者ではなく現場です。現場を最大限尊重し信頼し、一定の範囲内で持って彼らを支援する。その感覚でツールの要件を決めていきましょう。

 

ここから先は、私の感覚と実際の設計に基づく感想になりますが、、、、

WF(ウォーターフォール)的なガッチリしたレポートToが決まっているものは、マネジメント(管理)の与える影響が強いため、その点はService NOWが良いかなと。

Agile的な、フラットな階層構造で進めているプロジェクトは、その目的で分けるのが良いと思います。

例えば、チケット(作業)管理側面が強いものはRedmineとかJiraとか。ただしどんな時でも、工数、人月を管理するのであれば、それは別で管理しましょう。というのも、そもそも工数管理そのものがマネジメント(管理)の側面が強い印象があります。これは、日本における労働三法の影響だろうなと考えています。そもそも二次産業隆盛期に作られた均一化された労働力管理を行うための法律なので。。

では、Agileな仕事の進め方ではどのように工数管理を行うべきかというと、1チケットあたりにかかる時間を均一にする。つまり、仕事にチケットを振るのではなく、時間にチケットを振るのです。可能であれば、1仕事=1チケット=1単位時間となることが望ましいです。

さて、いつも以上にサラッと書いてしまいましたが、このアーティクルは答えではなく、答えに繋がる何かにご活用いただければ幸いです。

読了:Team of Teams

久々に読書感想文。

 

翻訳家の腕なのかもしれませんが、とにかく非常に腰が低いです。このテの自分の実体験をベースにした研究は、概ね(個人の穿った見方かもしれませんが)「これから先、こんな手法が王道になるのだ!」というような強い意志を文章の端々から感じるのですが、この本はそうではなかった。

序章にも「私の経験が全てに通用するとは思わないが、何かの発想のヒントとなりうる事を祈念している」的な書き方をされています。

 

 

アルカイダ作戦の指揮官として配属された著者が、退任後自身の経験を分析しいかにして変化対応(原文に即すなら適応の方がいいかもしれません)型組織としてのチームとして成り立っていったかを書いた本です。

 

ちょっと横道にそれますし、反論もあると思いますが。

個人的には、軍事的な研究は平和的な転用をすることで便利な社会を作ることができると思っています。例えば、現在携帯電話を耳に当てずに電話している人を見ないことはないですが、それを可能にする技術エコーキャンセルは、潜水艦のソナーの技術の転用です。他にも、有名な話で言えば、インターネットもGPSもそもそもは軍事技術として発達しそれを非軍事技術として転用したものですよね。これは軍事技術というものが費用対効果をガン無視して研究することができるからではないかと思っています。(個人の感想です)

ですので、軍事的な背景があった研究であったとしても、そういった事を拒絶するのは勿体無いなと思っています。誰かを傷つけるための技術であったとしても、それを扱う人が意識をすれば、世界を少し変えられる技術として誰かの役に立てる。そう願っています。費用対効果を出さねばならないビジネスに対して、軍事技術の研究は太いパトロンが必ずつくので費用対効果を無視できる。それだけなのです。

 

閑話休題

 

この本ですが、簡単に書けば組織の壁を壊し、人の信頼関係を取り戻し、組織を変えていった話です。今までの本と変わり映えしないですね(笑)

ですが、今までの組織論と確実に違うと思われる点として、目まぐるしく変わる状況下において、相手を信頼し、状況を察し、臨機応変にチームと人とが動けるようにする(つまり、察することを可能にする)土台を作るために組織の壁を壊した。そして組織の壁を壊せる人材は、受け入れる側にも受け入れてもらう側にも一定の条件がある。ということを解き明かしている点で読み応えがあります。

また、このような変化適応型組織としてよく言われる

マネジメントからリーダーシップへ、Lean /Agileの組織論に近いです。

逆に、DevOpsのように、LeanやAgileの組織論を土台としたテクニカルな開発〜デリバリメソッドは一切書かれていません。まぁ、そりゃそうですよね、開発〜デリバリという点はこの本の世界観では、土煙と実際の戦闘行為なので。。。

このような変化適応型組織において、マネージャーはどのようなマインドセットを持った人材が必要でそのようなマインドセットをどのように伝播させていくのか。さらに、マネージャーはマインドセットの育成と電波と共にその作戦(ビジネス)に必要なスキルセット(プロフェッショナリズム)を合わせていく必要がある。

承認する、責任を取るそれだけではなく、こういうことを狙っていくことが高度化されたマネージメントには求められていくのかもしれません。

管理(マネジメント)と制御(コントロール)

お久しぶりです。最近プライベートが忙しく、かつAC IVも発売され遠ざかっておりました。いいですよね、AC。もう、時間が溶けるし何より単に楽しい。

 

さて、今回はITILというより、ITSMにとって重要だと思うマネジメントすることとはどういうことかを語りたいと思います。

そもそもITSMとは、ITサービス管理と呼ばれるものの略称です。では、ITSMとは何をすることがITSMなのか?

この問いをITサービス管理を主務とする方々に投げかけたとすると、おそらくさまざまな答えが返ってくると思います。ただ、その中で誰しもが思い浮かべるものとして、「ITサービス管理ツール(ITSMツール)を導入する」ことが上がってくると思います。

それ(ITサービス管理ツール導入)そのものは確かに大切ですし、コアな業務であると私も思います。しかし、ITSMツールの導入が大切なのは、管理(マネジメント)のために制御(コントロール)するための道具の導入だからなのです。

管理したいものを可視化するために、確実に制御する。そのためのツール導入であって、ツール導入そのものが管理ではない、ということを明言しておきたいと思います。それはあくまで制御です。

ITサービス管理ツールという言葉に引っ張られて、例えば、Jira /SNOW/Remedyなどのツールを導入することが管理であるというのは、大きな勘違いです。ITサービス管理ツールの導入は、あくまで「管理のために制御する」ことを目的としているのであって、管理のために導入していません。

 

したがって、何よりもかによりもまずは、自分たちが何を管理したいのか?を明確にする必要があります。

Vモデルで考えてみましょう。

ja.wikipedia.org

自分たちが何を管理したいのか。つまり、、、自分たちが提供しなければならない(IT)サービスとは何か?それを定量的に表す指標は何なのか?端的にいえば、要求定義と要件定義です。

具体的にいえば、どのような(What's kind of...)チケットが必要なのか。これは超具体的な話(例えば、パスワードリセットや構成変更など)をしていません。ここでいう「どのような」とは、どのような種類が、、、、という意味です。端的にいえば、「(投資家保護法の理由から/会社法上の理由から/左記ひっくるめて統制上の理由から/地政学的な理由から/組織上の利益確保の理由から)変更管理」を必要とするチケットって何種類必要ですか?とか。そういうことです。あくまで一例ですが、チケットの種類が何種類必要か、そのチケット枚数は週間/月間/年間何枚ぐらいを見積られているのか、それに対して必要になる体制(人月、スキルセット、ヘッドカウントetcetcこれら定量化できる「単位」)は何が必要で、「単位毎」に定量化できる「数量」は幾らかのか?これらを予測や一定のルールベースに基づいて定義する。これが可視化のための第一歩。別の言い方をすれば、管理(マネジメント)する際の指標です。

では、それら、マネジメントする際の指標がどう積み上がっていけばサービス提供の現場が可視化されるのか、それを制御するのがコントロールな訳です。Vモデルでいうところの詳細設計なわけです。

例えば、積極的に管理したい種類のチケットがあったとしても、それが正しく正確に起票されたり、入力されたりしなければ、管理(マネジメント)できません。可視化された数字が正しいものでなければ、正常な状態なのかそうでないのかの判断ができないからです。

正しく起票されるようにするため、問い合わせやアラートが発報されたら、自動でチケットが起票されるようにする。正しく入力するために、自動で入力されるようにしたり、誤った入力がなされた場合にそれ以上チケットのステータスが変わらないようにする、ガバナンスに違反しないように承認されなければ次のステップに行けないようにする。そういう制御(コントロール)を入れることが必要になってきます。ね?設計でしょ?

 

マネジメントにより、要求と要件が定義される。

コントロールにより、定義に基づいて設計がなされる。

 

これを具体的に示すと、あくまで一例ですが、下記になります。

管理(マネジメント)によって、どんな種類のチケットが必要で、それらをそれをどう処理(プロセス)するかを決める。(もちろん定義するのはチケット種別だけではありません。あくまで一例です)

制御(コントロール)がそれぞれの種類のチケットがどの流れ(フロー)を通ってクローズまで制御されるのかを設計する。

これらが終わって、初めて、ITSMツールの「製造(コーディング)」が可能となります。

 

ITSMツールの導入に絞って話をしましたが、管理(マネジメント)と制御(コントロール)の違いについてご理解いただけましたでしょうか?

 

「ITサービス管理の導入」と言っても、自分の今しようとしていることは、「管理(マネジメント)」なのか「制御(コントロール)」なのか。これを常に意識しておきましょう。

考えてみてください。「ITSMの導入」というSIプロジェクトにおいて、要件定義フェーズでフロー(詳細設計)を設計をしても話が発散します。逆に、詳細設計フェーズでチケット種類(要件定義)を決めようとしても手戻りしていて進捗が遅れます。

自戒の意味も込めて。

ジャーニーマップの落とし穴(ITIL4フレームワーク研究)

こんにちは。今日は、当ブログでも何度か取り上げたジャーニーマップについて。

このジャーニーマップですが、簡単に言えば、ユーザの体験を図示したものです。本ブログの常連(笑)、みんなの銀行とセブン銀行のネタで一度作成させていただきました。

 

agile-beginners.hatenablog.com

当時は、教科書通りに書くことを嫌い、かなり改変(というか今見返せば、改悪)してこのブログオリジナルな劣化版ジャーニーマップとして記載しましたが、まぁ、こんな感じです。

 

正直、当時この劣化版ジャーニーマップを書きながら、こんな感じで本当に良いのか?と違和感はあったのですが、やっぱり間違って描いてたなぁと今更思います。

 

どういうことかということ、このジャーニーマップは、ユーザの体験に基づき、どのような機能(または組織)やサービスがユーザとタッチポイントを持つのかを示し、リアルな体験を整理するフレームワークです。

したがって、縦軸に機能を並べるのは誤りではないのですが、過去記事のようにそれぞれのユーザの要求に対してバラバラに作成するとおそらく落とし穴にハマる。

もちろん、ユーザの行動に従って、どの機能がどのような「経験」をタッチポイントで提供するのか?を振り返り整理するという目的に使うのはOKです。

しかしながら、それに囚われ過ぎてしまうと、サービス提供側が提供したいサービスに特化したジャーニーマップを作ってしまい、結果として、ユーザにとって不利益な顧客体験が出来上がってしまうのではないか、ということを懸念しています。(これが落とし穴)

 

具体例で示しましょう。とある一般コンシューマ向けの有償サービスで自分のID /パスワードがわからず、ヘルプデスク/サービスデスクに連絡をしたという状態を考えてください。つまり、L1はユーザIDのリセットサービスを提供している。(今時セルフリセットできるでしょって話は横に置いておいてくださいwww)

そして、この有償サービスプロバイダーは自社の他のサービスも使って欲しいため、コンタクトを取ってくれたすべてのユーザに、どのような追加サービスを提案したらいいか、常に機会を探るという方針のもと、L1は「追加のサービス提案サービス」という内部サービスを自社の事業部門に提供している、という状態です。

ここまで前提。

この時、このユーザはとにかく自分が契約しているサービスを可能な限り早く再度使えるようにしたいはずです。

そして、このサービスプロバイダーのL1は、他のサービスを提案する機会を常に探っている。

では、この「ユーザIDのリセットサービス」と「追加のサービス提案サービス」を何も考えず同時実行するとどうなるか。

サービスが使えず困っているユーザに、IDのリセットサービスを提供する前に、こんなサービスに興味ありますか?とアンケートを取ってしまう。一般的に考えれば、キレます。

いやどう考えてもそんなことありえないと思うのですが、それぞれのサービスを独立して管理し、実行すると、この摩訶不思議な顧客体験は起きる可能性があります。筆者は体験しました。(その企業の名誉のために、社名も具体的なサービス名も明かしませんが)

ただ、この最低最悪な体験は非常に重要な示唆を含んでいると思うのです。

それぞれのサービスを個別に、まるでサイロのように無結合(疎結合でも、密結合でもないという意味)で管理すると、サービスを使えず困っているユーザに別の新規サービスを勧めるというようなことを、無邪気にしてしまう。(感情を害していると言うことにすら気が付かない)

これはユーザにとっても企業にとっても悲劇です。

だからと言って、これを回避するためにジャーニーマップはユーザ視点に立ってサービス提供前に作るべきかと言われると、それもまた違うと思うのです。なぜなら、ユーザ一人一人に合わせてジャーニーマップを作ると膨大になり、費用対効果が釣り合わないためです。

ジャーニーマップの最も効果的な使い方は、大きくは3つ。

  1. これから作成するサービスに対して、どの機能がどこでどのような顧客体験を提供することが体験を強化、または補完することになるのかをクリアにするために使う(サービスの事前検証)
  2. 既存サービスによる顧客体験であれば、その経験は意図したものであるかを検証するために使う(既存サービス単体で見た時の事後検証)
  3. 最後に、増えすぎたサービスが効果効率的な顧客体験を維持しているかを検証するため(サービスのリファクタリングと言う意味合いでの検証。Lessons Learnedに近いかも)

こう、、、サービスの設計文書類として保管し作成物にすると言うより、サービスの現状やサービスとサービスを組み合わせた時の現状の可視化ツールとして使う。それが、ジャーニーマップなのではないか、と思います。

 

ITIL4で考えたマーケティング戦略-セブン銀行の本気度-

ご無沙汰しております。本日はまた、セブン銀行のサービスにインスパイアを受け、この疑似を書こうと思いました。

過去、セブン銀行が新たな顧客を創出した、という記事を書きました。

agile-beginners.hatenablog.com

今回はさらに、セブン銀行はこのようなATMというものをどう扱おうとしているのか、彼らの戦略を踏まえてITIL4で検証してみましょう。

まず、下記、2024年3月期の第一四半期決算 説明資料をご覧ください。(クリックで開きます)

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS96633/586c32ff/c59c/4036/97ac/99bbc73bbc9d/140120230803533965.pdf

まず、3Pを見てわかることとして、セブン銀行にとっての「お客様」つまり、マーケティングの対象となる事業は2つあるということがわかります。すなわち、、、「ATM(国内・海外)」「預金貸出(ローン)」の2つです。

過去記事で取り上げた通り、彼らはATM利用者をキャッシュカードを持ってATMに立つ人のみを対象としていません。現金をデジタル化・アナログ化する接点としての役割を欲する事業者、例えば、自行のATMを進出させきれない他行(都銀・地銀・銀行関連ノンバンク)やそもそも自社ATMを開発する気がない(資本を投下する優先順位が低い)金融サービス企業、金融サービスを提供するIT企業、PayPay、LINE Pay、auPay、d払い、楽天payなどいわゆる"チャージ"をしたい企業からの手数料でも成り立っています。

なのでこの前笑ってしまったのですが、こんなこともできます。

PayPay送金しか方法がない取引の際、QRコード取引でセブン銀行ATMから現金を引き出し、セブン銀行ATMからPaypay口座にチャージして、Paypayの機能で送金する

デジタル間取引ができれば一番早いのですが、現金がいわゆる一つのI/Fとして存在しているが故に、どうしても銀行口座にあるデジタルのお金をアナログな現金(紙幣)に変換し、そしてPayPayアカウントのデジタル化のお金に再度変換することで送金する。つまり、銀行に預けることでデジタル化された現金を、一度アナログな現金に戻した上で、PayPayのプラットフォームで再びデジタル化する。そうすることで送金ができる。

セブン銀行からすれば、ATMに保管される紙幣の総量は変わらず、手数料だけは銀行とPayPayからもらえる。なんという超効率的な収益のあげ方か……!!

余談ですが、PayPayはデジタル/アナログ変換に手数料の支払いだけで済む(自分達でデジタル/アナログ変換する機会を創出しなくて良い)し、Paypayユーザも必要な分だけをPaypayに振り込めばいいので無駄に大量に現金をPaypayに振り込む必要がない。誰も損をしていない。

 

結果、セブン銀行の四半期決算説明資料には、主要計数として、ATMの利用件数がカウントされレポートになっている。これは本当に銀行の決算説明資料としては面白い。通常、銀行の決算説明資料では、「貸出残高」を初めとした「集めた現金をいかに運用しているか」を示す係数が出されます。

しかしセブン銀行は、そもそもビジネスモデルが、お金を運用することではなく「現金をアナログ/デジタル間で変換させることによって発生するトランザクションに課金する」というビジネスモデルなので

  • どのデジタルプラットフォームに変換するか
  • いつ、どこでデジタルとアナログの変換を発生させる需要があるか

の2つに集中すればいい。

そう集中した際、彼らは、「どの」デジタル・プラットフォームという部分に集中して取り組み、既存の金融サービス企業(PayPayや楽天auなど)や既存銀行だけではなく、ドル、ルピア、ペソなど国を跨った金融プラットフォーム向けのデジタル/アナログ変換にも進出しています。(決算説明資料16P以降)

そして、「いつ、どこで」デジタル/アナログ変換を発生させる需要があるかに真剣に取り組むがゆえに、不振のインドネシアATM事業において、「設置場所の見直し、利用促進を企画する」というレポートを出せる。(決算説明資料19P)ATMの設置台数を毎月速報としてレポートし、四半期決算では、ATM設置件数とともに利用件数を主要計数として報告する。(決算説明資料9P)

 

さて、これらを理解した上で、セブン銀行をITIL4で考えてみると、彼らは「サービス関係モデル」を新たに定義しました。ただし、これは自分達(つまり、銀行)目線でサービス関係を作ろうとしてもうまくいきません。なぜなら、銀行の本分は「お金を集めお金を必要とする誰かに貸す」ことだからです。

 

そもそものセブン&アイ・ホールディングスのパーパス「あったらいいな」これはUX(ユーザエクスペリエンス)です。これを叶えるためのDX(デジタルトランスフォーメーション)として既存のリソースの最大活用を考える。この発想ができて初めて、この全く新しいサービス関係、つまり「お金のアナログ/デジタル変換」に至ることができる。

 

さらに今回ここにきて22P以降にある通りセブン・カードサービスが加わって、セブン銀行として自社のノンバンク事業を手に入れた。

ノンバンクはもはや与信業務特化というより、デジタル化した決済手段の側面が強くなってきました。つまり、セブン銀行は「お金のアナログ/デジタル変換」特化ではなく、そこからさらにデジタル決済に係る自社サービスを手に入れた。これにより、セブン銀行は新たなサービス関係を構築することができます。

セブン銀行は本気です。実は、金融業界のAmazon(流通の黒船的な意味で)なのではないか。そう思えてきます。

 

 

セブン銀行ATMをみて、マーケットの創出というものがどう言うものかを感覚的に理解した。

つまり、現金をデジタルとアナログの境界を再定義するサービスを開発し、それを求めるユーザのアクティビティをマーケットに据えた。

 

結果、カオスな(スマホを使ってみんなの銀行から引き出し、スマをを使ってpaypay口座に入れる)みたいなことができる。

 

競合という意味で、アナログな業界にもデジタルな業界にも全方位に喧嘩を売っていく新しいスタイルのマーケットを開発した。(笑)